「トラブルを乗り越えろ」Crazy Director Recording Diary 03
さて、レコーディング初日でのトラブル発生からのお話のつづきであります。
トラブルはピアノのトラブルでした。ピアニストの野﨑さんが途中で演奏をやめて、困りながらも、全体のムードを下げないように、あかるくトラブルを報告してくれました。
野﨑さん:「あー、、ちょっとすみません。ちょっとすみません。あれ?、あのー。。。あのですね。。。どう言えばいいのかな?・・・ピアノのハンマーのフェルトがですね、、、ってか、ハンマーの動きかがぁ〜、、、えーっと、本来なら、こうなんなくちゃいけないのがぁ〜・・・・」
文章はむずかしいですね。
このシーンは、野﨑さんがジェスチャーつきで、ぼくらに説明しようという、体をはったアプローチに出て来きたのです。
「こうならなくちゃいけない」・・・を表したジェステャー
野﨑さんは自分のボウズ頭をハンマーに見立てて、ピアノの鍵盤を弾きながら頭を垂直に動かします。
これは正常にハンマーがピアノの弦を叩いている状態を表しているようです。
野﨑さん:「こうならないといけないのがぁ~・・・こうなっています!わかりますかぁ?」
「こうなっています!」・・・のジェスチャーの動きは、
中腰になって、あたまを上にあげながら、体を左右にふるわせながら鍵盤を叩いています。そして、その音には、へんなノイズが含まれています。。。。
これはハンマーが左右にズレながらピアノ弦を叩くので、ハンマーの芯で弦を叩けていない状態である、ゆえに、ノイズが発生しているという意味のようです。
エンジニアのとディレクターは、ピアノブースに入っていって、状態を確認します。
エンジニア:「今、ピアノの音、最高にいい状態なのに、残念だね。これじゃできないね。」
ディレクター:「スタジオさん、調律師さんを呼んでください。これじゃ録音できないんで。」
スタジオさん:「今連絡とったんですが、ホールにはいっちゃっていて、来るのが16:30~17:00くらいになっちゃいそうです。」
ディレクター:「しょうがないよね。」
野﨑さん:「えーっと、いや、なんとかなるかも。」
ディレクター:「どうすんの?」
野﨑さん:「えーっと、この、鍵盤をなるべく使わないコードの積みでアプローチしながら、使うときには、弾くときの力加減とかぁ・・・」
ディレクター:「そんなこと出来るんですか?」
野﨑さん:「無理かなぁ?・・・いや、でも、もしかしたら・・・やれるかも・・・」
そんなわけで、レコーディングを再開しました。
30分ほど進行はストップしましたが、レコーディングを再開しました。信じられないことですが、まったく録音上では気にならないピアノの綺麗な音で録音が完了しました。森川さんの歌もばっちりで、これは、このまま確実に使える状態です。
強い声だなぁ。マーガレット・サッチャーは強硬な政治姿勢により「鉄の女」と言われたけど、森川さんもそんなイメージです。振り向かない、前しか見ない、目標に一直線、強行突破型です。かっこいい。
コントロールルームで「じれったい」の録音確認のために、プレイバックしているところに、調律師がもどってきてくれました。
タイミングがいい、こういうトラブルさえも、すべて味方につけてしまう。こういうことってあるんですよね。すべてが上手くいく、そう確信しました。