「Friend」 Crazy Director Recording Diary 10
Miho Morikawa 「another Face ~ Goro Matsui + Koji Tamaki ~」
クレイジーディレクターのレコーディング日記
森川さんのレコーディング2日目 -「Friend」
2019-8-14
17:30 ~ 「Friend」
Vo & Piano+Percussion
どんどんシンプルに「歌」の根源へと向かうように、演奏者の人数は減っていきます。
「歌」の根源は、この世に生まれてきたときの産声ではないかと言っていた人がいます。もしそうであれば、人はみんな歌ってこの世に参上します。素敵ですね。
ぼくらは産声をあげてこの世に生まれ、そして向こうに帰る時、息を吸って引き取ります。
おもしろですね。
羊水の中にいるわけですから、最初に空気を吸うものだとおもったら、その前に、まずは(たぶん、、勝手な想像ですが)気道を通すためにオギャーと息を吐いてこの世に参上します。
昔の西部劇ではピストルで撃たれたカウボーイは「ハッ」って息を吐いて死んでいましたがあれはウソです。
人は息を吸って=引き取ってこの世での活動を終えます。ぼくが、このことを初めて知ったのは4歳のときでした。
ぼくが4歳の時、おばあちゃんが他界するときのことでした。ぼくが4才のある日、幼稚園から家に帰ったときお医者さんが家にきていました。
先生「もう、もどってこないかなー」
おばあちゃん「ふー」
先生「あ、もどってきた」
おばあちゃん「スー」
ぼく「あ、息すった!」
先生「息はね、吐いたら必ず吸うんだよ。最後は息を吸って、もどってこなくなるんだよ」
ぼくの頭の中「TV西部劇のララミー牧場では、撃たれた人が死ぬ時、息を吐いて死んでる・・・あれはまちがいだ」
ぼくは4歳のときに、「息を引き取る」という意味を知った。
なんだか、もどりにくいですが、無理やりもどりましょう。これ以上の思考散歩は危険です。
それで「Friend」です。
これは、とても難しい歌です。
それこそ「呼吸」、そして「伝える」という意味、そこにある「時間」「距離=空間」など、全員が共通認識の上で、森川さんは歌い、野﨑さんと一匹さんは楽器を演奏しています。
「Friend」での森川さんの歌は、目の前にいる「君」にむかって歌っています。すぐそこに「君」はいます。だいたい2.5mくらいでしょうか。
ピアノという楽器の音はけっこく大きいので、演奏の仕方によっては歌がかき消されてしまいます。
もちろん、エンジニアがバランスをとることは出来ますが、演奏するということは他人にまかせることを前提としません。
その歌から伝わるデリケートな「感情」や「距離」を感じながら、音の強さ、ベロシティを意識して、ピアニストもパーカッショニストも演奏しています。
これがインタープレイであり、今回、ぼくらが同時録音で一番大切だと感じていることです。
野﨑さんはじめ、森川チームの演奏家は、みなさん本当にすばらしくて、森川さんの歌声から「目的」「距離」をキャッチして精神、時空、リズムをシンクロさせながら演奏します。
エンジニアは音をデジタルに変換させるという技術的な作業を行なっていますが、音楽的な感覚をもっている人が作業することがとても大切です。
エンジニアは技術ではなく、技能が勝負なのです。こうやってぼくらは「音楽」をみなさまへ届けることができます。
こうしてみると、歌う人、演奏する人、録音する人、パッケージする人、届ける人、など役割がはっきりしてきます。
しかし、おもしろいもので、ディレクターは何もしていません。演奏も、録音も、プレスも流通も、なにもやっていない人です。唯一ブログを書いています。
「Friend」を歌う森川さんは、2.5mほど先にいる「君」へ歌うというアプローチを選びました。
音を聞くときに、この「距離感」をぜひ意識してみてください。そうすると、頭の中に距離を設定したことで、あなたにとっての「君」の映像が浮かび上がります。
音を聞いたとき、演奏者のアプローチもより身近に「なるほど」と感じると思います。
リリースは11月を予定しております。
森川さんのホームページ 気にしておいてください。