しあわせとすれ違った 〜記憶について-02〜
記憶について考えていたら、思い出した。
2016年の8月の本栖湖での出来事です。
ちょうど今頃の風景です。
この子はどうしてるかな。
今週、とてもひさしぶりに孫たちとあう。
たのしみだ。記憶もやっぱり散歩する。
2016年8月の本栖湖
2才、3才、そしてお腹の中には3人目という若い夫婦。女の子がぐずり始めた、抱っこしてほしいのかな。そう思いながら、すれちがった。
僕は湖をぼーっと眺めていた。
しばらくして振り返ったら、女の子は1人でしゃがみこみ、意地をはっていた。
両親は、お兄ちゃんとずっと先を歩いている。
僕は戻りがけに、女の子をゆっくり追い越しながら、
少し距離をとって
「よしっ、立ち上がれ!ほら、パパとママがまってるよ。」・・・って、声をかけながら応援のためのガッツポーズをつくった。
見知らぬ誰かの声がタイミングよく背中を押した。
「よし、いいぞ!」
みんなが待ってるよ。
ゆっくり、ゆっくりで大丈夫。
一歩づつ歩けば、パパとママのところに到着するよ!
夫婦は心配そうに眺めて、軽くお辞儀をして挨拶してくれた。
チビちゃんは、がんばった。
お兄ちゃんは、走って妹を迎えに来た。
通りすがりの役割を果たしたぼくは、バイバイと手を振った。
女の子はバイバイと手を振りかえしてくれた。
そして、小さな唇が「アリガト」と動いた。