「今」を生きる方法

頭の中を空っぽにしたいと思い、和歌山にあるお寺に遊びに行った。自然に囲まれた環境でぼーっとすることをしに行った。そこで、いろいろとわかったことがある。

頭の中を空っぽにすること＝何も考えないことというのは思いのほか難しいということ。静かに瞑想しようとしても、ぼくの頭の中は、ずいぶんとにぎやかなものだ気がついた。「何も考えないようにしよう」ということを「考える」。そして、いつの間にか、また違う何かを頭に浮かべている。心穏やかどころではない。静けさを味わおうと来た、山の上のお寺で、ぼくの頭の中は雑念だらけなんだなと気がつく。まったくお忙しいぼくの脳みそよ、おつかれさん。

「不安」はいつも未来からやってくると住職から教えてもらった。だからこそ、「今」この瞬間を生きること、「今」に集中することが大切なのだと住職は言った。

人間はつい未来を考える。そして、勝手に自分自身の中に「不安」を作り出してしまう。アリにもクモにもカラスにも、犬や猫、動物たちにこのタイプの「不安」というものはないと言う。なるほど、そうかもしれない。

では、どうすればいいのか？ということになった。それは簡単で、いつも「今」を生きなさいということだ。たしかに、現代は「ながら」の時代だ。食事をしながらテレビをみる。携帯をみる。

「今」に集中するのは、どのようにすればよいのか？・・・と住職に尋ねたてみた。

簡単ですよ。
たとえば散歩の時は「歩いていること」に意識を集中する。「右、左、右、左・・・」と足を動かして歩いていることを意識すればいい。

食事のときは味覚に意識をもっていって、ゆっくりと噛むことに集中して、一口食べたら50回とか100回とか決めて、食べればいい。そうすると、自然と「今」を生きることができるようになって、不安はなくなりますよ。・・・とおっしゃった。

とそのとき、ぼくはお寺の宿泊施設に３泊したのだけど、その３日間、住職は1日1食しか食べなかった。それも、昼に小さなカップヨーグルトにゴマと何かをあわせたようなものをまぜて、ゆっくりと食べる。食事は以上。コーヒーは好きで飲んでいて、あとはお水のみだった。

「坊主っていうのは、修行の身なんですよ。しかし、最近の坊主は、金持ちで、ベンツにのっていて、夜は繁華街に飲みに行く。太っている人も多くなったなー。キラキラの袈裟を着た太った坊さんが高級車からおりて来ても、、、あれは、かっこ悪いなー。あれじゃ信頼できないかもなー、ぼくはそう思うな。坊さんは痩せてたほうがええちゃいますか？ぼくはそー思うなー」・・・笑顔で、とても柔らかいムードでおっしゃるところが、とてもかっこよかった。そしてもちろん、住職はやせています。

ある方の49日での納骨で都内のお寺へ行ったときに、お寺の駐車場にはBMWがあって、なんだかえらそうなタイプの太った坊さんが、お経をあげていたが、声がしっかりと芯をとらえているようには感じなくて、なんとなく、つまらないお経だなと感じたことがあった。心に沁みてこないのだ。しかし、ここの住職のお経はすばらしかった。誠心誠意、心から、なるべく大きな声をだして、観音様、仏様へとどくように、お経をあげる。そばで聞いているだけで、気持ちがよくなってくる。

手を合わせてからお堂に入り、ろうそく、お香、などの準備を整え、心をしずめてから20分くらいのお経を読む。ぼくも、よくわからないけど、お経の本を借りて、ルビを追いながらとにかく声をだしてみる。気持ちがいいがおいつけない。よどみなく、お経をあげられるようになるだけでも、ながい修行が必要だったことがわかる。

このご住職は、お経の内容とか、あまりむずかしい説法はしない。「学術的に意味を勉強するとか、ぼくはあまり興味がないんです。坊主はお経をあげることが仕事ですから」とおっしゃった。「頭で考えている」だけの状態では修行にならないのだ。ひたすらにお経を読み、仏に近づくことで、ある境地に到達する。そうなるためには、頭で思うだけじゃなにも始まらない、行動しろ＝お経をあげろ、ということが、住職の考えなのだろう。

スターウォーズで言えば、考えるな、感じろ。フォースを信じろ・・・みたいなイメージなんだろうな。このお寺は、仏教が伝来したあと、かなり初期にたてられたお寺だそうだ。有名ではないが、この山の上の小さな寺は、なんとも聖地という言葉がしっくりとくる。

３日を終えて考える。いったいぼくの生活はどうなんだろう。どう考えても必要エネルギー以上の食事と飲酒をつづけている日々。そんな生活をもう何年すごしているのだろう？　これでは、フォースを感じることはできまい。

少し食事の量をへらそう。
いや「少し」なんて書いているうちはだめだ。決意が足りない。
まず今日から３食を２食にします。
そしてまたお寺に行こう。